日本が長年不況でいるのは、どうも、お金をうまく活用できていないからであるようです。
お金がきちんと活用されれば、もっともっと、日本で、再生エネルギーなどの新しいインフラや、既存インフラの修繕や強化、教育、地方のまちづくり、農産業や酪農といったことにも、活発に投資がされるはずなのに、と残念に感じます。
もっと多くの人が、もっと学びの機会を得られて、その人の持てる力を発揮できるような社会になってほしい。そしてすべての人が、健康で文化的な暮らしができるような社会になってほしいものです。
さて日本では、個人口座の現預金を合わせると、530兆円以上あります。
企業も220兆円以上現預金を持っていて、内部留保として最近話題になっていますが、このエントリでは個人の貯金について書きます。
OECDの国ごとに、成人一人当たりの負債を引いた後の金融資産を見ると、アメリカやスイスは超大金持ちがいますから別格として、日本人はOECD第三位の金融資産持ちです。
出典:Wikipedia: List of countries by financial assets per capita(単位:USD)
国/地域 |
成人一人当たり金融資産(負債を除く)2011 |
UnitedStates |
132,822 |
Switzerland |
100,812 |
Japan |
85,309 |
Belgium |
78,368 |
Netherlands |
71,063 |
Canada |
63,261 |
UnitedKingdom |
60,065 |
Luxembourg |
57,159 |
Israel |
55,932 |
Sweden |
55,301 |
Italy |
54,147 |
Germany |
49,484 |
Austria |
48,125 |
France |
47,668 |
Iceland |
43,045 |
Denmark |
39,951 |
Australia |
38,482 |
Portugal |
29,640 |
SouthKorea |
28,290 |
Ireland |
28,099 |
Spain |
23,120 |
Finland |
20,190 |
Slovenia |
18,912 |
Chile |
18,141 |
CzechRepublic |
17,262 |
Greece |
14,004 |
Hungary |
13,652 |
Mexico |
10,449 |
Poland |
10,406 |
Slovakia |
9,651 |
Norway |
8,365 |
Estonia |
7,843 |
NewZealand |
7,480 |
Turkey |
3,317 |
その上、日本人は資産の50%以上を現預金として持っており、これまたOECD諸国の中で突出しています。ちょっと古いデータのようですが、『世界が分かる地図帳』(2007)からのデータをご紹介します。
※ここでいう「資産」には金融資産以外の資産も含みます。
アメリカ:現金:175万3,944円、資産:1,223万6,815円
日本:現金:638万5,500円、資産:1,158万9,000円
イギリス:現金:256万6,085円、資産:899万4,523円
ドイツ:現金:252万6,383円、資産:660万461円
アメリカ人は、株などの形で金融資産を持っていて、現預金は少ないとのことです。
こうしてみると、日本では個人のお金の多くが銀行に死蔵されていて、ちっとも設備投資や、消費に回っていないのです。
日本人はどうして、お金を貯めてしまうのでしょうか。
それは、バブル崩壊後、日本の政府や政治家や、経済学者や社会学者や識者や、企業経営者が、こぞって、「将来は年金が減る、社会保障費が減る、医療費を削減しなければならない、増税しなければならない、社会保険料を上げなければならない」と恐怖を煽ってきたからです。
日本人は長生きです。
自分が65歳で必ず死ぬとわかっていれば、それまでにきれいにお金を使おうとするでしょう。しかし、もしかすると100歳まで生きてしまうかも知れない。その間には、病気になることもあるでしょう。意識がしっかりしている間は、病気になったらきちんと手当を受けたいものです。医療や介護を自費でないと受けられないなら、いつ病気になるかわからない、また、いつまで生きるかわからないけれども、念のために貯金しておきたいと思うでしょう。
かくして、高齢者が多額のお金を銀行に預けてしまうことになります。
もし、国が「そういうことは、個人個人ではどうなるかわからないから、国が数百年単位で、全体として平均して考えて、リスクをならして、お金を効果的・効率的に給付しましょう」といって、個人を安心させてくれるなら、個人はもっと、お金を使えるようになるのではないでしょうか。
そうすれば経済が活性化して、税収も上がるでしょう。
国が個人を安心させるには、「財源確保のために増税や社会保険料の値上げが必要」といってしまうと逆効果だと思いますが、どうでしょうか。なぜなら個人は、近い将来、可処分所得が減ると予想したら、お金を使わずに、節約してしまうでしょう。
もし国が債務超過になるたびに増税するとしたら、仮にあるとき増税によってプライマリーバランスを達成できても、また債務が増えたらまた増税になります。そうなると国民は、それを見越してお金を節約するようになります。そうして消費活動が低下し、結局は税収が足りないということになるのです。
そもそも増税は、財政の帳尻を合わせるためのものでしょうか?これまでは、もっぱらそう考えられてきました。でも別の説もあります。増税は、過熱した景気を冷やすため、民間からお金を吸い上げるために行う景気調節ツールとして使うべきものだというのです。これは興味深い考え方ですし、有効だと思えます。
ですから社会保障費は、増税とは無関係に、必要な分だけ国がお金を出せば良いのではないかと。
増税するかしないかということと、社会保障費をどれだけ出すかということは、切り離して考えなければ、人々の消費行動を変えることはできないと思います。そして切り離して考えても、別に国が破たんすることはないし、将来世代にツケが回ることもなさそうです。
それより増税すると、かえって将来世代にツケを残すという方が、ありそうなことです。これは、これまで長年考えられてきた通説とは異なる考え方です。
「お金」をうまく効率的に使うためには、このような新しい考え方が必要になると感じています。その新しい考えに関する情報を、このサイトに集めていきたいと思います。